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英国の製薬会社アストラゼネカ社が開発
イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)は、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌治療薬
副作用で死者が多数発生して大きな薬害裁判にも発展したので日本でも知名度が高い抗がん剤。

2002年に日本で承認されたときは「手術不能又は再発非小細胞肺癌」の治療薬として承認された

しかし全ての非小細胞肺がんでなく一部の遺伝子変異型にのみ効果があると
販売後の調査でわかり2011年、添付文書が改訂され「EGFR遺伝子変異陽性患者」に適応症が変更

今では肺がん対象のEGFR標的薬はイレッサ以外にもタルセバ、ジオトリフ、タグリッソと
選択肢が沢山あるけどEGFRを標的にした薬はイレッサが初めて



薬理作用

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イレッサはEGFR(上皮細胞成長因子受容体)に変異がある部分に作用する。
変異している場所はエクソンの19番と21番。
この変異は非喫煙者の東洋人女性の腺癌に起こりやすい。

分子レベルで見るとATPの代わりにチロシンキナーゼを阻害することにより
癌の増殖シグナルを阻害する。
原理的にはノバルティスの慢性骨髄性白血病薬グリベックと同じチロシンキナーゼ阻害薬

しかし残念ながらその作用点であるEGFRには更に変異が起こりやすい。
変異が起こって構造が変化してしまうとイレッサがくっつけなくなってしまう。
そしていわゆる耐性が生じてイレッサが無効化されてしまう。

具体的にはEGFRの790番めのトレオニンがメチオニンへ入れ替わる変異が 起こりやすい。

そのT790M変異が起こってしまった患者さんには同じアストラゼネカからT790M変異陽性に
効果があるタグリッソという第三世代の抗がん剤が使用できる。



用法・用量

通常、成人はゲフィチニブとして250mgを1日1回、経口服用する。

食事の影響

欧米人健康志願者(n=25)において、本剤を食後投与したとき
AUC及びCmaxがそれぞれ37%及び32%増加したが、臨床上特
に問題となる変化ではなかった

イレッサは酸性度が高いと溶けやすい。

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高齢者は空腹時でも胃酸が少なくなってpHが上昇している事があるので食後服用が望ましいようだ。
ガスターやタケプロンを併用していると胃酸量が少なくなり溶けなくなるので注意。



イレッサの効果

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EGFR遺伝子変異陽性だと無増悪生存期間も全生存期間も大幅に増加している。
しかし陰性だと効果が無いというか既存の化学療法に劣勢


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こちらの無増悪生存期間グラフは不思議なグラフをしている。
6か月までは白金+パクリタキセル群の方が良いけど6か月以降は逆転している。

ただ最初にイレッサを使用してから化学療法をしても化学療法を施してからイレッサを使っても
全生存期間には影響が無いとのこと。



重大な副作用

急性肺障害、間質性肺炎(1~10%未満):急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、
胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、
投与を中止し、適切な処置を行うこと。

2002年に発売された時には間質性肺炎の記載が一番目ではなかった。
その事がイレッサ薬害裁判で指摘されて現在の添付文書では一番最初に記載されている。


特別調査「イレッサ錠250プロスペクティブ調査」

安全性評価対象症例3,322例中1,867例(56.2%)に副作用が認められた

主な副作用
発疹568例(17.1%)、肝機能異常369例(11.1%)、下痢367例(11.1%)

そして急性肺障害・間質性肺炎は193例(5.8%)等であった。

急性肺障害・間質性肺炎193例のうち、75例が死亡。
3,322例中の死亡率は2.3%、急性肺障害・間質性肺炎発現症例数193例中の死亡率は38.9%であった。(2004年8月報告時)

間質性肺炎を発症したら4割近い人が致死的
イレッサを服用した患者さんの50人に一人以上の確率で命を落とす。

息切れや痰を伴わないせきを自覚したら直ぐ医師に連絡。

EGFR変異陰性の患者にはほぼ無効なので服薬のリスクリターンを考慮したら
服用する前に遺伝子の変異を検査するのは必須と考えられる。

皮膚の乾燥も起こりやすいので起きた場合はヒルドイドソフト軟膏等で対処しよう。
下痢は軽度の場合はロペミンも使うが重度の場合はイレッサ中止も考慮。





代謝

イレッサの主代謝物はO-脱メチル体でCYP2D6が関与している。
O-脱メチル体以外の代謝物はCYP3A4が関係している。

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2D6がイレッサの代謝に必要なので抗うつ薬パキシルとの飲み合わせには気を付けよう。
癌になると精神的に不安定になり抗うつ薬を処方される患者さんも多い。
パキシルはCYP2D6を強力に邪魔するのでイレッサの血中濃度を上昇させる可能性がある。


ちなみに代謝物M1の細胞増殖阻害作用は、未変化体イレッサの約14 分の1 
しかし酵素阻害試験段階では、M1の EGFR チロシンキナーゼ阻害作用は、未変化体と同等である。

これは細胞膜を透過する際に必要な脂溶性が低下したためと思われる。
イレッサとM1の構造的違いはメチル基がヒドロキシ基に代わっているだけだが
メチル基は脂に溶けやすい。それに対してヒドロキシ基は極性が高く水に溶けやすい。
細胞膜は脂なのでM1に構造変化し脂溶性が低下すると通過できない。



イレッサの売上

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発売されてから直ぐに間質性肺炎の副作用がクローズアップされて売上が落ちたが
分子標的薬としての真価が証明されてから売り上げは2倍に増えた。

イレッサの売上はアストラゼネカの株価に影響を及ぼさないが
肺がん治療の歴史を変えた重要な薬。

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