0064



名前の由来は食後高血糖による膵の疲弊や血管障害を防止し、患者の生命を救う(セイブする)

一般名はミグリトール

1970年頃にドイツの製薬最大手バイエルがリード化合物を発見して開発した比較的古い薬
しかし日本では薬価収載されたのが2005年と新しめの薬。国内特許が切れたのもここ最近。

デオキシノジリマイシンという桑の葉に含まれる化合物に似た成分を元に開発が進められた。
桑の葉っぱには血糖値上昇を抑制するという言い伝えがある。

セイブルは自由診療で減量目的として処方されることもある。

日本ではphaseⅡ後期試験までをバイエル薬品株式会社が行い
その後三和化学研究所(現医薬品卸スズケングループ傘下)が開発を継承。

2016年の決算を見ると
セイブルの売上は182億円(医薬品業部門の全体売り上げは406億円)
三和化学売上全体の45%を占めている重要な薬




αグルコシダーゼとは糖を分解する酵素の一つ
お米にはデンプンが含まれている。
デンプンのままではエネルギー減として活用できない
グルコースとして血中に吸収されるためには分解されて最小単位のグルコースとなる必要がある。


αグルコシダーゼ阻害薬はその分解する過程を阻害してグルコースの吸収を阻害して
食後血糖の上昇を抑制する作用がある。

現在3種類のαグルコシダーゼ阻害薬が存在する。

グルコバイ(一般名:アカルボース)
ベイスン(一般名:ボグリボース)
セイブル(一般名:ミグリトール)

3つとも糖の吸収を抑える薬で大きな差異はないが細かく見てみると
メリットとデメリットが存在する。


適応症

糖尿病の食後過血糖の改善
(食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えてSU剤、BG系薬剤,インスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)

薬に頼る前に食生活改善と運動。
二型糖尿病だとこの2つに勝る薬は存在しない。



薬理作用

0062


糖を分解する酵素と言っても一種類ではなく様々な酵素がある。

セイブルが阻害する酵素は主にマルターゼ、スクラーゼ、そしてラクターゼ
ラクターゼは別名乳糖

3種類の薬の中で唯一セイブルがラクターゼ阻害作用を持つ。
この特徴が副作用を引き起こす原因にもなる。



副作用

総症例1030例中、副作用が報告されたのは519例(50.4%)であった。
主な症状は鼓腸197例(19.1%)、下痢188例(18.3%)、腹部膨満153例(14.9%)
低血糖80例(7.8%)

この下痢の頻度は明らかに他のαグルコシダーゼ阻害薬よりも高い。

ベイスンの下痢頻度は4%
グルコバイに至っては下痢の記述が無い(その分、屁が15%あるけど)

セイブルが乳糖分解酵素を阻害すると腸にそのまま乳糖が移行してしまう。
乳糖は水に溶けるので乳糖が腸内の浸透圧を上昇させる。
浸透圧の関係で腸壁から水分が出てきて浸透圧性下痢になってしまう。

もう一つ考えられる下痢の原因は腸内細菌の中には乳糖を利用する菌が存在し
その菌の働きにより乳酸やメタンなどが発生。

これらの酸により便のpHが酸性状態になると腸壁を刺激してしまい蠕動運動を強めてしまう

お腹が弱い人はセイブルは避けた方が良いかもしれない。


もし低血糖が起きたら直ちにブドウ糖(グルコース)を補給すること。

砂糖(ショ糖)はグルコース とフルクトースが結合している二糖類なので
分解しないとグルコースとなれない。
分解酵素を阻害するセイブルを服用していると砂糖を摂取しても効果がすぐに現れない。


効果


ミグリトールと偽薬の比較

2型糖尿病患者の二重盲検比較対照試験(有効性解析対象:プラセボ84例、ミグリトール158例)

プラセボのHbA1cが0.25%↑、食後血糖1及び2時間値が、0.8mg/dL↑及び3.3mg/dL↑
に対して
ミグリトール50mg1日3回12週間投与で0.35%↓、73.0mg/dL↓及び27.8mg/dL↓低下した




SU剤併用

SU剤で治療中の2型糖尿病患者対象
ミグリトール50mg1日3回12週間投与した併用試験
(有効性解析対象:プラセボ77例、ミグリトール152例)


最終評価時におけるHbA1c
プラセボでは0.20±0.53%(Mean±SD、以下同様)上昇したのに対して
ミグリトールでは0.28±0.61%低下し、有意差が認められた(p<0.0001)。


単剤でも他種の糖尿病治療薬を併用している場合でも
平均してHbA1cを0.3程度下げる作用があるようだ。

重篤な副作用も少ないので軽度DMの患者さんには良いかもしれないが
重度のDM患者さんだと単剤では力不足だろう。


0061





薬物相互作用

チトクロームP450系への影響は無し
ミグリトールはヒトチトクロームP450分子種(CYP1A1、CYP1A2、
CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、
CYP2E1、CYP3A4)の代謝活性を阻害しなかった

ミグリトールは代謝を受けず未変化体のまま主に腎排泄される

基本的に併用薬には注意しなくても良い薬だけど

ジゴキシン(外国人における成績)
健康成人男子12例に対し、ジゴキシン0.3mg 1日1回反復投与時の定常状態において
ミグリトール50及び100mgを1日3回7日間併用投与した時、
単独使用時と比較しジゴキシンのCminは19%及び28低下し、尿中排泄量は19及び33%低下した。

ジゴキシンとの併用は注意した方がいいかもしれない。
なぜ低下するのか機序は不明だが



薬物動態


セイブルは他の2つとは異なる体内動態を示す。

3つとも小腸粘膜に存在するαグルコシダーゼを阻害することは共通しているが
グルコバイとベイスンは小腸で吸収されずに小腸全体に作用する。

それに対してセイブルは小腸の上部で50%ほどが吸収されてしまう。
なので小腸下部でのαグルコシダーゼ阻害作用は上部に比べると弱い。

この点はセイブルの欠点では無くメリットにつながっている。

食事をして一時間後に食べ物が小腸に到達する。その時に強く阻害作用を示すので
血糖値が一番上昇するスパイクを他の2種類より抑制する作用が強い。

0063


グルコバイだと1時間後に血糖値が大きく上昇してしまう。

0066



急激な血糖値の上昇は血管に対してダメージを与えるので好ましくない。
セイブルの穏やかな血糖上昇曲線は体に優しい。


そして小腸下部での阻害作用が弱いということがダイエットにも有効な点と繋がっている。
グルコースが小腸で吸収されるとGLP-1というインクレチンホルモンが出てくる。

GLP-1というホルモンは有益なホルモンで小腸下部にあるL細胞から分泌される。

GLP-1の作用は

ブドウ糖濃度依存性インスリン分泌促進
ランゲルハンス島β細胞増殖作用
グルカゴン分泌抑制
中枢性食欲抑制作用

GLP-1は元々体内にある物質なので変に食欲を抑える心配が無い。健康的に痩せられる。

腸内インクレチンにはもう一つあってGIPというグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
このホルモンは小腸上部や十二指腸のK細胞から分泌される。

GIPは少ししかインスリン分泌を促進しない、そして脂肪を蓄積してしまう傾向がある。
なので可能な限り同じインクレチンでもGIPは無い方が良い。

しかしGLP-1は血液中にあるDPP-4という酵素によって速攻で分解される。
なのでそのDPP-4を阻害するジャヌビアやエクアと併用すると更に効果が期待できる。



まとめると

セイブルは

小腸上部・・・GIPを増やさず
小腸下部・・・GLP-1を増やす

作用点がナイスな物質。
よくこんな物質を発見したものだ、ドイツの医学薬学は世界一ィィィ!


seb



にほんブログ村 株ブログ 米国株へ
にほんブログ村