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セルシンを代表とするベンゾジアゼピン系睡眠薬が発売されたのが1960年代
それから約50年後 ようやく新機序の睡眠薬が2014年11月に日本で発売された。
それが米メルクが開発した睡眠薬ベルソムラ

ベルソムラはオレキシンという脳内物質の働きを阻害する。
オレキシンは発見されたのが比較的最近の新しい物質で1998年に日本人が発見した。





一般名:スボレキサント
商品名の由来:フランス語で美しい睡眠


2017年にインパルス堤下さんが睡眠薬を飲んで運転したというニュースが流れた。その時に服用していた睡眠薬がこのベルソムラ。そしてもう一つレンドルミンという睡眠薬を併用していた。

そのレンドルミンもフランス語由来で眠りにつくという意味

ベルソムラとレンドルミンを併用すると美しく眠りにつけるかもしれないが危険なので車の運転は×



ベルソムラの薬価(2018年4月時点)
ベルソムラ錠10mg=68.0円
ベルソムラ錠15mg=89.1円
ベルソムラ錠20mg=107.9円

市販薬ドリエルは12錠で1600円位するからドリエルより安い( ^ω^)


オレキシン(別名ヒポクレチン)とは?

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視床下部で作られる神経ペプチド

覚醒を司る物質でAとBが存在する。
欠如するとナルコレプシーになる

オレキシンは日中に多く脳内に存在し夜は減少していく
そしてまた明け方に増加していくサイクル

オレキシンにはAとB があり受容体にも1と2の二種類がありベルソムラは両受容体を阻害する。
1番も2番もGタンパク質共役型受容体だが睡眠覚醒の制御に重要なのは2 型受容体

このオレキシンという物質を 発見したのは日本人

しかしベルソムラを開発販売したのはアメリカの製薬会社メルク
以前にも同じような事があった

コレステロール値を有意に下げるスタチンを発見したのは日本人研究者
しかし世界で最初に商品化したのはこれまたアメリカの製薬会社メルク

そしてメルクが世界で一番最初にベルソムラを発売した国が日本ていう




効能又は効果
不眠症(二次性不眠症に対する本剤の有効性及び安全性は確立されていない。)

悩みや不安、他の疾患が原因の不眠には有効性が実証されていない。
抗不安作用は無いので不安のせいで不眠になっている場合だと無効な場合がある
不安を伴う不眠の場合はレム睡眠が増加する関係で悪夢を見る確率があがる


用法及び用量

成人にはスボレキサントとして 1 日 1 回20mg
高齢者には1日1 回15mgを就寝直前に経口投与する。

10mg錠は併用注意な薬と一緒に服用するときに処方される。(ジルチアゼム、ベラパミル、等)

ベルソムラは食後に服用すると吸収が遅延する(約1時間)
厳密にいうと就寝前と就寝直前は違うそうだが定義は知らない。

構造式

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)
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ベンゾジアゼピン系とは違う構造をしている。
共通しているのは7環だがその環にも2重結合が無い。


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オレキシン受容体との結合には酸素原子が重要な働きをしているようだ



薬理作用

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ベルソムラはオレキシン受容体1と受容体2の両方を阻害するデュアルオレキシン受容体阻害薬
フルアンタゴニストではなく受容体結合率が65%以上になると眠気が出る傾向



臨床効果

phaseⅢ
原発性不眠症患者638例
ベルソムラ(成人:20mg、高齢者:15mg)又はプラセボを3ヵ月間投与した場合

sTSTm:主観的総睡眠時間(毎日の測定値の週平均)
WASO:客観的中途覚醒時間
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ベルソムラは総睡眠時間の延長と中途覚醒の改善作用を持つ。
定常状態に入ると入眠時間を30分短縮し総睡眠時間を1時間延長する。

中途覚醒に対してはすぐに効果が現れるのに対して総睡眠時間延長の作用は3か月継続服用することにより効果が発揮される。

ベンゾジアゼピン系とは全く異なる作用機序なので単純に効果を比較することはできないがデパスやマイスリーよりはマイルドな印象、これは抗不安作用がベルソムラに無いのも影響しているかも

車の運転で例えるとこれまでの睡眠薬は無理やりブレーキを強く踏んで止めていたがベルソムラはアクセルを踏めなくして自然と穏やかに脳を休める

市販薬だとドリエルに似ている。ドリエルの主成分のジフェンヒドラミンは覚醒物質ヒスタミンを邪魔することで眠気を誘導する。

それにしてもプラセボは良く効く
病院だと睡眠薬をクレと駄々こねる入院患者にただの乳糖やデンプンを睡眠薬として飲ませるとコロッと大人しくお眠りになる。精神領域の新薬治験はプラセボが高いハードル



睡眠維持効果
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高用量は1回40mgで日本では承認されていない。




ベルソムラが糖尿病に効く?

2017年2月放送のNHK番組『ガッテン!』

ベルソムラが糖尿病に効果があるような放送をしていた。


最新の睡眠薬(ベルソムラ)で糖尿病が治る


こんな宣伝を製薬会社が自らしてしまうと厚生労働省からもの凄いペナルティを貰う
でもNHKは総務省の管轄だから何もお咎め無していう・・・

ベルソムラは糖尿病にエビデンス無いし完全に適応外使用
確かに睡眠の質をこれまでの睡眠薬よりは改善して熟睡できる可能性はあるけど熟睡できたからストレスホルモンが低下して血糖値が下がるなんて飛躍しすぎてる

番組の制作者がMSDから接待でも受けたのかというレベルの放送
まだオレキシンというホルモンやベルソムラは未知な部分があるので糖尿病に絶対効果が無いとは言えないが現時点ではそのエビデンスは無いし厚生労働省も適応を認めていない。

そもそも抗精神病薬や睡眠薬の多剤処方をどうにか減らそうとしている厚生労働省からしたら糖尿病に適応外で睡眠薬出すとかケンカ売ってるレベル 



副作用

主な副作用は、傾眠(4. 7%)、頭痛(3. 9%)、疲労(2. 4%)

実はオレキシン欠乏がナルコレプシーの原因だからあのリタリン並に厳しい規制をするべきという一部の医師の意見もあったが厚生労働省は却下している。臨床試験でナルコレプシーは示唆されなかったので。ナルコレプシーの発現は受容体レベルで9割以上のブロックが動物実験で必要との結果がでている。ベルソムラは7割そこそこの受容体結合率らしい

実際の特徴的なベルソムラの副作用としては悪夢の出現がある。
ベルソムラはレム睡眠(夢を見るのはこの時)の時間をこれまでの睡眠薬と比較して短くしない。なのでベンゾジアゼピン系からベルソムラに切り替えると夢を見る頻度が増えるのが一因かも
まだ夢というものが脳科学的にほとんど解明されていないので推測でしかないけど


依存性についてはメルクが無いとしている。しかし嗜好性はマイスリーと同程度あり



吸収と作用時間

日本人健康成人(12 例)に、本剤 40 mg を空腹時単回経口投与した後のスボレキサントは速やかに吸収され、投与後 1.5 時間で最高血漿中濃度(Cmax)に達し、平均半減期は 10.0 時間

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基本的にベルソムラは服用して1時間で効果が表れ6時間は持続する。

しかし最高血中濃度に達するのは90分後だが食事後だと3時間後になる。
食後でも最高血中濃度自体は変わらないから夕食後に服用するのもありかも

半減期は10時間以上と長めだが翌日に持ち越しは少ない。
これはオレキシンの生体内レベルが朝になると上昇してくるので受容体との結合率が低下するため

メルクのデータを見ていると気になったのが誤差かもしれないがベルソムラは男性より女性の方が血中濃度が上昇しやすい。せいぜい10%程度の違いなので服用量を調節することも無いかもしれないが



代謝

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肝代謝によってベルソムラは消失する
ヒトにおける主要代謝経路は、トリアゾールベンジル部位の水酸化による M9 の生成と、これに続く M9の酸化によるカルボン酸体(M4)の生成又はM9のグルクロン酸抱合化によるM11の生成

なので肝機能が低下している人や代謝酵素が被っている薬の併用は血中濃度が上昇する。
絶対に3A代謝薬と併用していけないわけではなく10mgで調整併用することができるけどそこまでしてベルソムラ使いたいかと言われたらそこまででもない気がする。



排泄

主な排泄経路は糞便を介するものであり約66%が糞便中に排泄され尿中への排泄は23%であった。
ベルソムラは99%が代謝物として排泄される。

なので腎機能が低下している人には比較的使いやすい。クレアチニンクリアランスが30以下の重度の腎機能障害患者にベルソムラ20mgを投与しても血中濃度はベースラインと比較しても+20%程度





併用禁忌

CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール

ベルソムラは代謝酵素3A4で代謝されるので併用薬に気をつける必要がある

使用頻度が高い薬だと抗生物質のクラリスロマイシン
クラリスロマイシンは マクロライド系の抗生物質で歯医者なのでもよく処方されるし耳鼻科でも慢性副鼻腔炎で少量処方されることがある。皮膚科だと水虫の内服薬で併用禁忌の薬がある



独り言

まだオレキシンに作用する薬はベルソムラしか存在しない。
そもそもまだオレキシンという物質についての知見が少ない。

覚醒や睡眠に関係するのはオレキシンBでAはほとんど関係しない、ならオレキシンよりB受容体選択性が高い新薬がこれから発売されるかもしれない。さらにオレキシンは摂食行動や代謝にもかかわっているので身体に負担の少ないダイエット薬が開発される可能性もある。

そして不眠症とは逆に突然寝てしまう病気であるナルコレプシーの治療薬にも繋がる可能性がある。最初からナルコレプシー患者に直接オレキシンを注射したら良い話だと思ったがオレキシンの分子量が3000以上と大きすぎて血液脳関門を通過できないらしいのでベルソムラの様に低分子なアゴニストがあれば捗る。

ベンゾキサジアゼピンはロシュがクロルジアゼポキシドを最初に合成して以来様々な睡眠薬や安定剤、鎮静剤が開発された。もしかしたらこれからオレキシン刺激薬、阻害薬が大きく発展していくかも

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